パパ苦悩 スランドゥイルは、今非常に不機嫌でいた。 この男、ヒカリモノ好きが高じて宝石屋になったようなものである。 地位も報酬もあとからついてきたものだ。趣味でやってるから、 やたらと事業を広げたりしないし、決して妥協もしない。 自分でいい石を買いつけてきて、純度の高い金属を使い、 信用の置ける工房で細工をする。昔かたぎの職人に近い。 財界でその名を知らぬ者はいないというくらい 影響力をもつエルロンドとは、180度違う。 で、そのエルロンド卿を前に、 スランドゥイルは不機嫌な顔をしていた。 彼の応接間には不穏な緊張感が立ち込めている。 「相手が誰であろうと、息子を売るつもりはない」 その一言で、それ以上は話を聞く気もない。 まったく頭の痛い息子だ。頭がよくて才能もあり、 運動神経も抜群。非の打ち所のない自慢の息子であるが故、 やたらと悪い虫にたかられる。 かといって、家の中でおとなしくしている性格でもない。 「卿の影響力は存じているが、私の事業を潰すおつもりなら、 それでもけっこう。だが、息子はやらん」 ちっとは話を聞けよ、オヤジ! とエルロンドは心中舌打する。 まあ仕方ないか。さっきもさっきで、 例の海運会社と一悶着起したらしい。 「そのようなつもりはない」 どうやって説明をしたら良いのだ? 「私は仕事の話をしに来たのではない。レゴラスの・・・」 その名前で、また空気が5度下がる。 応接室の外では、スランドゥイルの秘書やらOLやらが 身を凍らせて息を詰めていた。お茶を運ぶこともできない。 エルロンドはひとつ咳払いをした。 「レゴラス君をしばらく家で預りたい。 幸、私には二人の息子がいて日常生活で不自由はしないと思うし、 学校を休ませるつもりもない。息子の方が年上なので、 勉強も見てもらえるだろう」 はたしてその台詞が正しかったのか・・・? スランドゥイルの顔が引きつっている。 つまり、彼より年上の子供がいるが、 レゴラスを嫁にくれと言っているのだ。 しかし、他にどんな言い方が・・・? 「・・・断る」 やっぱり。エルロンドは胸の中でため息をついた。 救世主というのは、いいところで現れるものだ。 ドアの外でばたばたと足音がして、突然ドアが開かれた。 冷え切った空気が、外に流れ出す。 聞き耳を立てていた連中は、さっと仕事に戻っていった。 「エルロンド卿!」 スーツ姿のレゴラスである。学校の帰りらしい。 「すまない。君の父上を説得できなかった」 エルロンドの腕にすがって、レゴラスは父親をキッと睨んだ。 「僕、卿の所に行くよ! 反対するなら家をでる!」 「レゴラス、落着きなさい」 一番落着いているのは、やっぱりエルロンド。 「レゴラスを不幸にするつもりはない。 どうか許していただきたい。気分を害するつもりはないが、 仕事上でもできるだけ助力はしたい。 先日の海運会社の件はレゴラスから聞いた。 私の方で何とかしよう」 これでいいのか? 本当にいいのか? 苦悩に顔をゆがめたまま、父は許すとしか言いようがなかった。 父の最大の弱点は、最愛の息子に嫌われることだった。 ********************************** 書いてみたらつまらなかったね。 すみません。 シリアスに煮詰っているらしい、私。