またもや続き 不安定な膝の上で、レゴラスはエルロンドにしがみついた。 なんだか急に、そうしたくなった。 不安・・・・なのかな? 「奥様が亡くなられて、エルロンド様は寂しいと思いますか?」 膝の上で甘える少年の髪を、優しく撫でる。 「・・・寂しい・・・という表現には、語弊がある。 確かに、妻を亡くした悲しみはあるが。その場所は、誰か他の者で埋められるものではない」 揺れる緑色の瞳で見つめられ、エルロンドはその瞼にキスをする。 「寂しいからお前と付き合うのではない。お前を愛しているからだ」 レゴラスは、ちょっとだけ笑んで見せた。 「寂しいのか?」 ゆるゆると首を横に振る。 「朝、息子たちが言っていたことを気にしているのか。 お父上が、寂しいから女遊びをする・・・と?」 それには答えず、ただ俯く。 「・・・グロールフィンデルさんに押し付けて、帰ってきちゃいました」 ぴくり、とエルロンドの口元が反応する。 それは・・・二人が付き合っていると知ってて・・・? 「グロールフィンデルさんには、悪いことしちゃいました」 おや? 「迷惑なのはわかっていますけど・・・僕は、グロールフィンデルさんが好きです。 だから、仲良くなってくれればいいなって、そう思うんですけど。 でも、難しいですよね。グロールフィンデルさんは真面目な方ですから」 エルロンドは返答に詰まった。 「最近・・・何故かグロールフィンデルさんを見てると、母を思い出すんです。 ほとんど記憶にない母なんですけど。 ただ・・・なんていうか、父に対していつも一線引いてたみたいなところがあって。 僕には理由はわからないのですけど、 ・・・グロールフィンデルさんもそんなところがあるんです。嫌われているのでしょうか?」 「嫌ってはいない・・・とは、思うが」 グロールフィンデルの行動の説明をするのは、レゴラスには難しいだろう。 それは、自分は相手にふさわしくないと鎧を作ってしまうからだ。 それでも、好きだという感情は止められない。 「・・・・僕、どうしていいか、わかりません。 きっと、やっぱり、父が知らない女と寝ることに嫉妬しているんです」 それで無意識によく知っている男とくっつけようとしているのか? エルロンドは大きく深呼吸をした。 ここはやはり、聞いておきたい。 「レゴラス」 「はい?」 無防備な瞳を向けられる。 「・・・・お父上の相手が・・・その、グロールフィンデルなら、許せるのか?」 レゴラスは、じっとエルロンドを見つめ、そして考え込むように視線を外した。 失言か・・・ 本人たちが秘密にしていることを、バラしてはやはりまずいだろう。 それに、スランドゥイルがどう思っているかなど、エルロンドにはわからないのだ。 ただ、自分を思っている奴を無碍にはできないということくらいで。 「・・・・・グロールフィンデルさんは、 遊びで誰かと付き合えるような人ではないと思います」 だから、エルロンドは困っているのだ。 「今日も、ずいぶん困っているようでしたから。父にからかわれて」 見てみたかったような・・・。 「明日、謝ります」 「いや、謝ることはないだろう」 「どうしてですか?」 一瞬返答に詰り、エルロンドは口元を引きつらせた。 「・・・本当に嫌なことなら、奴は進んで出向いたりはしない。たとえ、私の命令でもな」 そうなんですか、と、レゴラスはちょっと不思議そうな顔をした。 で、許せるのかどうなのか・・・? 質問を蒸し返すことは、エルロンドは控えた。 「エルロンド様」 「なんだ?」 「僕に・・・何か隠してます?」 息が詰まり、エルロンドはレゴラスを凝視した。 鋭い。 答えられないエルロンドに、レゴラスはふと眉をしかめて微笑んだ。 「すみません。こんな話、嫌ですよね。父から離れられない僕を、軽蔑なさるでしょう」 悲しそうな切なそうな笑み。だめだ、耐えられない・・・。 エルロンドは、レゴラスをぎゅっと抱きしめた。 「私の愛し方が足りないのか? お前を不安にさせるのは」 低く囁くエルロンドの声に、レゴラスは身を震わせて抱きついた。 「お前は何も心配しなくていい。スランドゥイル殿は、お前が思うほど軽薄な男ではない。 確かにグロールフィンデルはスランドゥイル殿が多少苦手ではあるようだが。 もしお前が気になるなら、私から注意しておこう」 「いいえ、いいんです。ただ・・・」 「ただ?」 「父には幸せになってもらいたいんです。 グロールフィンデルさんをからかってる父が、すごく楽しそうなんで・・・ 迷惑じゃなければいいなと」 迷惑じゃない。断じて。 いいかげん、はっきりしてもらいたいものだ。 こっちの身がもたない。 「心配するな。奴も大人だ」 多大に純情ではあるが。 レゴラスは瞳を閉じ、エルロンドはその唇にキスをした。 今すぐ抱きたいという欲望が込み上げてきて、 エルロンドはそのままソファーにレゴラスを押し倒した。 「で、なんで俺たちは自分家の前でこんなことをしているんだ?」 玄関前でエルラダンは呟いた。 「そりゃあ、部屋に戻るには居間を通らなきゃならなくて、 居間では親父がお楽しみの最中だからだろう」 双子は並んで腰をおろし、溜息をつく。 帰ってくるのが、遅すぎたのか早すぎたのか。 「不毛だ。入ろう」 立ち上がるエルラダンの腕をエルロヒアが掴んで引き戻す。 「親父の濡れ場が見たいのか?」 「俺は別にかまわないぞ」 エルロヒアはぶんぶんと首を横に振った。 「一時間くらい、どこかで暇を潰して来よう」 「一時間で終わると思うか?」 「・・・・一時間したら、電話を一本入れて家に戻ろう」 二人は大きく溜息をついて立ち上がった。 「居間でのHも禁止だな」 二人は声をそろえ、そして夜の街に戻って行った。