秘書乱入 日曜のうららかな朝。 双子は自分らで作った朝食をとり、 のんびりと一日の予定を話し合っていた。 掃除に洗濯、家事は双子の分担。 「家事が得意な嫁さんを期待していたのに」 「家事だけならハウスキーパー頼めばすむだろう?」 いつも水掛論。金がないわけじゃない。 小さい頃からやっているので、 それほど必要としないだけ。 それでも時々は愚痴りたくもなる。 家事の分担をしていると、 玄関のすぐ脇に高級車が乗り付けられ、 呼び鈴が鳴った。 エルロンドに負けず劣らず、 無表情で厳しい奴。 「おはようございます」 無愛想に言って、 その男はわが家然と入ってきた。 「社長は?」 「まだ寝てる」 エルラダンが迎え入れ、 エルロヒアがコーヒーを入れに行く。 「寝てる、ですと?」 俺を睨むなよ・・・ エルラダンは顔を引きつらせた。 「ほら、日曜で久しぶりの休みだし」 「日曜でも、社長はいつも この時間には起きて食事を済ませていたでしょう?」 「・・・いや、ほら、新婚だし・・・」 言訳をしてみる。確かに、 今までなら朝寝坊なんて言葉、無縁の人だった。 「親父に急用?」 「支社のコンピューターに ウイルスが発見されて、緊急会議が招集されました」 さいですか。 エルロヒアがコーヒーを持ってくる。 「けっこう。急いでいるので」 「まあ、そう言わず・・・。 起してくるから、コーヒーでも飲んで待っててよ」 秘書殿がじろりと双子を見る。 だから、睨むなって。 もっとも、このグロールフィンデルという男の いつもの表情なのだが。 「私が起しに行きましょう」 「やめといた方がいいと思うけど・・・」 「何故です?」 「いや、だから・・・新婚だし」 止めるのも聞かず、すたすたと寝室に向う 秘書殿のあとを、双子はついていった。 何度かノックをして声をかける。 返事がない。 年甲斐もなく 朝まで楽しんでいたようだからなあ・・・ と双子が苦笑する。 グロールフィンデルは躊躇なくドアを開けた。 案の定二人は眠り込んでいた。 「社長」 ずかずかと秘書殿は入り込んで、 毛布をひっぺがした。 (ひえー・・・勇気があるなぁ・・・) 覗き込もうとするエルラダンの腕をひっぱって、 エルロヒアはドアの陰に隠れた。 二人が全裸なのはわかっていたし。 「起きてください。緊急会議が招集されました」 この状況で冷静でいられる、アンタはエライよ。 エルロンドはむっくりと起き、 秘書の顔を見て眉を寄せた。 「コンピューターウイルスです」 「先週チェックをしたのではなかったのか?」 「新手のものです」 だから、どうしてこういう状況で 平然と仕事の話ができるんだか・・・? 双子は、尊敬というより恐ろしさも感じてしまう。 こいつら、実はロボットじゃないのか? 「すぐに行く。車を回しておけ」 くるりとグロールフィンデルは踵を返し、 無言で双子の脇を通り抜けていった。 隣の少年が、眠たげな顔を上げる。 「仕事だ。まだ寝ていなさい」 言われて素直にまたベッドに突っ伏す。 「エルロヒア、コーヒーを。 エルラダン、私のスーツを出しておいてくれ」 双子に指示を与えて、 さっさとシャワーを浴びに行く。 双子も無言で仕事にかかった。 こんなことは日常茶飯事なのである。 隣に裸の恋人が寝ているという新事実を除いて。 十分で仕度を終えたエルロンドが、 秘書の車に乗りこむとき、 いつのまにかちゃんと着替えたレゴラスが 双子の隣に立っていた。 「いってらっしゃい」 にこやかに見送る。 エルロンドは少しにやけて見えた。 車を見送った後、 双子は互いに顔を見合わせた。 「こういう日常に耐えられる女は、 まずいないだろうな」 「家事ができても、 日曜のたびに悲鳴をあげられたらたまらないし」 双子はレゴラスを見下ろし、 深くため息をついた。 いつもの日曜 続き。 まだ眠いらしいレゴラスは、 リビングのソファーでごろごろしている。 「おなかがすいた・・・」 そう言って、 甘えた視線を双子に向ける。 いや、いいんだ。 こいつが何もできないことは、 一緒に住んで二日でわかった。 「ソーセージ? ベーコン?」 「ベーコン」 「オムレツ? スクランブルエッグ?」 「スクランブル」 本日の食事担当エルロヒアがキッチンに向う。 で、掃除担当はエルラダン。 が、掃除担当者はレゴラスにつかまって 膝枕にされていた。 「今、親父が帰ってきたら、 俺はきっと殺されるな」 ため息混じりに呟いてしまう。 「どうして?」 「いや、なんでもない」 ことごとく鈍感な奴かもしれない。 だから寝込みを見られても平気なのか? 親父はとんでもない拾物をしてきたものだ。 「猫、だな」 朝食のトレーを持ってきた エルロヒアが苦笑する。 何もしないくせに、 やたらと可愛がられる、猫。 そう思えば、じゃれ付かれても諦めがつく。 双子の家の猫は、 おいしそうに朝食をほうばった。 双子が家事のほとんどを終え、 図書館で勉強しようかなどと話していると、 レゴラスの携帯電話がチェストの上で けたたましく鳴った。 むっとしてレゴラスが電話に出る。 「えーっ今からー?」 相手は誰だか知らないが、 あからさまに不機嫌な顔をしている。 「いいよ、迎えに来なくて。 一時間でそっちに行く」 不機嫌に電話を投げだし、 ソファーから起き上がる。 「レゴラス?」 「せっかくの日曜なのに、 仕事が入った。まあいいや、 エルロンド様もいないし。 ちょっと出かけてくるね」 それこそ猫のごとく ソファーから飛び降り、バスルームに向う。 しばらくして出てきた彼の豹変振りに、 双子は口笛でも吹きたい気分になった。 (化けたな) 細身のスーツに身を包み、 細く後で編んだ髪は、一糸の乱れもない。 当然目つきまで変っている。 小さなバックに荷物を詰め込むとき、 レゴラスは拳銃を取りだして弾の装てんを確かめた。 「ずいぶん物騒な荷物だな」 「原石の仲買業者といざこざがあって。 ちょっと仲介に行って来るけど、 夜には戻れないかもしれない」 「どこまで行くんだ?」 「東南アジア」 おい待て! ちょっとじゃないだろう? 「専用機を使うから、ご心配なく。 すぐに戻るので、エルロンド卿にそうお伝えください」 すっかり仕事モードに入ってる・・・。 呆然とする双子に、 宝石商の息子は商業的笑みを見せた。 「行ってきます」 いつもとかわらぬ、うららかな日曜。 「自分が一番まともに思える」 「同感」 双子は視線をあわせ、またため息をついた。 ******************************** 言訳しません。 好きで書いてます。 ヒンシュク覚悟・・・。