たて続けの海外出張、会議、パーティー・・・で、 エルロンドはかなり疲れていた。体力には自信があるが、 精神的ストレスはたまっていく。やれ食えだの寝ろだの、 秘書は事細かに気遣ってはくれるが、 さすがにストレス発散までは受け負ってくれない。 あたり前か。 で、今夜のパーティーを最後に、ひと月ぶりの休暇に入る。 妻を亡くして何年。自分から休暇が欲しいなどと考えたことはないし、 働いている方が気がらくだとずっと思っていた。 「今度こそ本当の休暇です。三日間、私も社長には連絡を入れません。 何かありましたら、社長の方から私に電話なりをください」 ひじょうにありがたい心遣いだ。 しかも・・・常人ならぬ秘書殿がエルロンドの休暇を この日にあてがったのには理由があった。 同じ日数だけ、レゴラスも完全な休暇を与えられたのだ。 結局のところ、おたがいに仕事をもっているからにして (しかもレゴラスはまだ学生)すれ違いは非常に多く、 一緒に住んでいなかったら、まずデートのひとつもできないだろう。 同じパーティーに参列していたレゴラスは、助手席でうつらうつらしている。 彼も、エルロンドとの休暇をとるために働き詰ていたのだ。 高級住宅街に隣接する公園の道路わきに車を停める。 レゴラスは何事かと薄目をあけた。 「疲れたか?」 「・・・はい」 「眠たいようだな」 言われてレゴラスは苦笑する。ストレスがたまっているのはレゴラスも一緒。 で、そのストレスが何によって解消されるのかも。 車の中でキスをする。毎日でもキスはするけど、 たっぷり時間をかけるのは久しぶり。その感触に溺れる。 (そういえば・・・初めてしたのも車だったな) エルロンドの頭を、そんな言葉がよぎる。 が、腕の下で気持よさそうに目を閉じるレゴラスを見ていると、 (まあ、いいか) と、どうでもよくなる。 始めてしまえば止らないのが男の生理。止める気もないのだけど。 慣れた手つきでパーティー用のスーツを脱がせていく。 車内の狭さなど気にならない。 滑らかな肌を愛撫していく。レゴラスは気持よさそうに喘ぐ。 で、だいぶ盛りあがってきたときに、レゴラスははたと我に返った。 「・・・いけません・・・車ですると・・・ グロールフィンデルさんに怒られます」 「やめるのか?」 意地悪く言われて、レゴラスは困惑したように頬を染めた。 エルロンドのそんな人間的な表情を知っているのは、 今はレゴラスくらいだろう。やめられるはずもなく、行為を続ける。 しかしさすがに車を汚さないように気遣う余裕はある。 脱いだシャツをあてがい、シートだけは死守した。 「レゴラス!!」 昼に近い屋敷のキッチン。テーブルでエルロンドは 新聞片手にコーヒーを飲み、レゴラスはその向いで牛乳を抱えていた。 「ワイシャツ、洗濯機に入れるなって言ってあっただろう!」 籠に入れた洗濯物を抱えたエルラダンが叫ぶ。 「パーティー用はシルクなんだぞ! 一緒に洗っちまったじゃないか! あーあ、もう着られねぇ!」 レゴラスは肩をすくめ、エルロンドは新聞で顔を隠している。 「・・・そう怒るな。また新しいのを買えばいい」 一応自分の責任でもあるので、フォローしてみる。 「親父、レゴラスを甘やかすなよ。ヴェルサーチの一点ものだったんだぞ。 俺が買ったわけじゃないけどさ」 奥から双子の相方が、丸めたスーツを抱えて出てくる。 「これ、全部クリーニングな」 「まだ一回しか着てないだろう? ワインでもこぼしたのか?」 双子は顔を見合わせ、ダイニングテーブルの二人を見た。 「「大人なんだから、家まで我慢しろよ!」」 声をそろえる双子に、公認夫婦は同時に背を向けた。 「ったく! 車H禁止!」 「午後ハロッズに買物に行くから、二人ともつき会えよ! どうせ休暇中はべたべたいちゃいちゃするしか予定ないんだろう?」 反論できるはずもない二人に、双子は散々文句を言った後、 買物の算段をつけ始めた。