さっきの続き。 ボロミアは、なぜレゴラスがチャイニーズレストランに 来たがったのか理解した。 円卓に山ほど並べられた料理。しかも、肉メイン。 パーティーでカクテルグラス片手に微笑む姿からは想像もできない。 「食べないんですか?」 「いや、いただいている」 というか、レゴラスの食べっぷりに圧倒されている。 「レゴラス殿・・・」 「なんですか?」 「普通、北京ダックは中身は食べないものではありませんか?」 器用な箸使いで肉を食べているレゴラスに、 恐る恐る言ってみる。 「だって、もったいないじゃないですか。 皆食べてもらうために死んでるんですから、 ちゃんと残さず食べてあげないと」 理に叶ってるのか? エコロジストなのか? 「食べ物は残したらいけない、と小さいときからの父の躾ですから」 それが金持の台詞なのか? 「よい父上ですな」 レゴラスは嬉しそうに笑った。本当に父親が好きなのだろう。 食べっぷりは見事だが、箸使いは優雅なので、 意地汚く見えない。美人は得だ。 最初だけは、チャイニーズよりフランス料理フルコースの方が 似合いそうだと思ったが、これだけ美味しそうに食べている姿を見ると、 やはりここで正解だったのだろうと思えてくる。 本人、気取った食事は好きではないらしい。 そしてやはり、そんなレゴラスに見惚れてしまう。 料理をあらかた食べつくしてしまうと、 レゴラスはボロミアに微笑んで見せた。 「隣、行ってもいいですか?」 「は・・・?」 何を突然、と驚いていると、レゴラスはひょいと ボロミアの隣に席を移し、その肩に頭を乗せた。 「レ・・・レゴラス殿・・?」 「すー」 って・・・寝てる?! ボロミアに身体を預けて、レゴラスは寝入ってしまった。 (どうしろと・・・この状況をどうしろと・・・?!) 「あーやっぱ料理残ってないか」 丁度よく現れたのは、野生の勘の鋭いアラゴルン。 「アラゴルン殿・・・」 「よほど腹を空かせていた様だし、 商談抜きでの食事なら行きつけのレストランだと思ってな」 「く・・・車は」 「どもるな。ちゃんと預けてきた。しばらく枕になってやれ。 信頼されてる証拠だ」 そうは言われても・・・滝のように冷汗が流れる。 アラゴルンはにやりと笑って新しい料理を注文している。 (これは新手の嫌がらせだ) 肩を固定されて動けないボロミアを尻目に、 アラゴルンは運んでこられた料理を黙々と食べ始める。 その食べっぷりも見事なものだ。レゴラスとアラゴルン、 二人そろったら店中の食材を食べつくしてしまいそうな勢い。 「まあ、なんていうか、レゴラスも飄々としているようで けっこう無理してるからな」 食べ物を口に入れたまましゃべるんじゃない、 とも思うが、大目に見てやる。 「と、いいますと?」 「大好きな親父さんの右腕になりたくて必死になってる ところもあるし、プライドが高いからガキだと馬鹿に されないように山ほど知識を詰め込んでる。 認めてもらうことが嬉しくて仕方がないんだ。 もともと能力があるから、それをこなしちまうしな」 はあ・・・と呆気に取られた返事をしてしまう。 確かに、並々ならぬ努力はしているのだろう。 それを感じさせない陽気さには、ただただ感心させられる。 「んで、無理が祟らないようにちゃっかり逃げ場所も 確保しているわけだ。弱みを見せたくないから親父さんの ところを飛びだしてエルロンドのところに転がりこんだんだな。 あそこじゃ、想像以上に甘やかしてもらえるから」 確かに、エルロンドの屋敷でのあの無邪気さは、 外での反動の表れなのだろう。 「それに味をしめて、甘えられる奴には甘えるくせがついちまった。 よかったなあ、ボロミア」 よかったなあと言われても・・・この状況は喜ぶべきなのか? 肩の上のレゴラスは、気持よさそうに寝息を立てている。 「もっとも、俺には甘えてこないが」 すごい勢いで食べるだけ食べたアラゴルンは、 タバコに火をつけた。美味しそうに煙を吐きだす。 「何故です?」 「前に一度、襲ってやったからだ」 片手でウーロン茶のグラスを握っていたボロミアは、 危く中身をぶちまけるところだった。 「な・・・!」 「いやほら、今みたいに安心して熟睡しているみたいだから」 「なんでそんなことを・・・!」 「なんでって・・・欲しかったからに決っているだろう?」 ボロミアの表情から滑稽なほど血の気が失せる。 なんでこの男はこうも色気のある話に弱いのだろう? アラゴルンは吹き出して笑った。 「お前は女に騙されて捨てられるタイプだな」 「余計なお世話です」 本気で怒るボロミアを、アラゴルンは可愛いとさえ思ってしまう。 この男の純情さは天然記念物ものだ。ひとしきり笑った後、 アラゴルンは声をひそめて口元をつりあげた。 「試したかったんだよ、簡単に落ちるのかどうか。 雰囲気や肉体の快楽に簡単に流されるような奴は信用ならん」 「・・・・で、どうしたんです?」 真面目なことを言っても、ボロミアはアラゴルンを 危ぶんだ目で見たまま。 「ナイフで刺された」 しばしの沈黙。今度はボロミアの方が吹き出して笑った。 「気をつけろよ、こいつは銃だけじゃなくナイフも器用に操る。 傭兵みたいな奴だ」 アラゴルンは二本目のタバコに火をつけた。 「と、いうわけで、今日の保護者役はお前に譲ってやろう」 「譲るって・・・」 「持ちかえって楽しむもよし。この通りの近くで 一番目立っているのがエルロンドの会社だから、 そこに届けるもよし。エルロンドが忙しくても秘書が 受取ってくれる。ここの支払は済ませておくから。じゃあな」 呆気に取られるボロミアの前でいそいでタバコを吸い終え、 それを灰皿に押しつけてアラゴルンは立上った。 「・・・と、三時から重役会だったな。遅れるなよ」 言残して去ったアラゴルンを見送ったあと、 ボロミアは腕時計を見て顔を引きつらせた。 (あと一時間もないではないか!) いっこうに起きないレゴラスを抱かかえて、 (普通背負うとかするだろう?)エルロンドの会社のビルの受付に 要件を告げる。顔色ひとつ変えない受付嬢は、プロだ。 「社長は来客中ですので」 そう言って現れた秘書に、懸命に平静な表情をつくる。 「ご迷惑をおかけしました」 まるで慣れているように、秘書がレゴラスを受取る。 と、ボロミアの目の前でその秘書はレゴラスの鼻をつまんだ。 「起きなさい」 な・・・何を・・・? 唖然とするボロミアの前で、レゴラスは目を覚ました。 「あ、グロールフィンデルさん、おはようございます」 その台詞もそうとうボケてる。 「午後から学校の試験があるのではなかったのか?」 「あー!」 レゴラスは秘書の腕から飛び降りた。 「ボロミア殿も、重役会がおありでしょう? 車を出してさし上げますのでお向いください」 何故知っている? エルロンドの秘書、 何故他人の予定まで知っている?! 結局、グロールフィンデルの出した車で、 二人は送ってもらうことになった。 最初からそうしていれば、何の問題もなかったのに・・・。 ロールスの後部席で、レゴラスはボロミアに微笑んだ。 「今日はありがとうございました」 「・・・いや」 照れてる自分が情けない。 「また今度ゆっくり」 レゴラスの笑みは魔性の笑みだが、 この尋常ならぬ連中とこの先ずっと付き合う事になるかと思うと、 ちょっと頭痛のボロミアであった。 *************************************** 書いてみたらくそつまんないからUPするのやめようかと 思ったけど・・・一応載せてしまいました。 ・・・落込・・・