「グロールフィンデルさぁん! 遊びましょぉ〜!」  エルロンドの社長室。  いや確かに今日はそれほど忙しくないのだが、社長室に「遊びましょう」と入ってくるのはどうなのだろう?  とは思うものの、にっこにこのレゴラスに敵う筈もない。  いやまて、今、グロールフィンデルと言ったな?  なぜ私ではない?! 「エルロンド様〜」  語尾にハートマークつけて、入ってくるなり首に絡みついてキスをする。よしよし。  しかしそのあとすぐ来客用ソファにぽすんと座ると、レゴラス用にコークの瓶を持ってきたグロールフィンデルに、 隣に座るように促す。そしてグロールフィンデルも素直に座る。  なんだこの取り合わせ? 「フフフ、いいのを持ってきましたよ。見たいでしょ?」 「条件は?」 「ローストビーフとチキンパイ」 「いいだろう」  レゴラスは、いつものスマホではなく、ipadを取り出す。そして、エルロンドに背を向けるように二人でそれに覆いかぶさる。 「ほう」 「いいでしょう、これ。これなんかも」 「なかなかだな」 「どれ欲しいですか」 「…………全部だ」 「もう、よくばりなんだからぁ」  エルロンドは自分の執務机で頭を抱える。  何をしているかは想像がつく。  おおかた、スランドゥイルの写真の売買だ。  すっかり堂々としたものだ。  ま、こそこそ隠されるより心臓に悪くないが。 「うっ」  どうやら一枚の写真にグロールフィンデルが激しく反応したようだ。 「フフフ…これ、ちょっとすごいでしょ」 「こんなものを」 「フフフ」  レゴラスの顔が悪代官になってる。  どうにもこうにもこの疎外感。エルロンドは思い切って立ち上がると、二人のそばに行く。が、レゴラスもグロールフィンデルも、さっとipadを隠した。 「だめですよ〜エルロンド様には見せてあげません」 「社長はあっち行っててください」  なんだこの二人? ムカッ 「なぜだね?」 「え〜だって、こんなの見て、エルロンド様が父さん見る目が変わっちゃったら困りますもの」 「どう変わるというのだ」 「えっちな対象」  きっぱり。  エルロンドが引きつる。 「私はスランドゥイル殿をそのように思ったことはないが?」 「だからですよ〜」 「そうです。あなたの性癖はよく存じてますので」  おっとグロールフィンデル、そうくるか。 「………わかった。では、どこか違うところでやってくれないか。気が散る」  はーい、と二人連れだって秘書室に引っ込む。クソ。  エルロンドは胸の中で悪態をついた。  グロールフィンデルの運転で帰宅途中。  普段は後部席に座るエルロンドが珍しく助手席を陣取る。 「珍しいですね」  とはいえ、グロールフィンデルもさして気にはしない。  車が動き出してしばらく後。車の運転が趣味のグロールフィンデルは、運転に集中しているし、ちょっと楽しそう。いつものことだ。  エルロンドは、直線コースを走っているのを見計らって、身を乗り出してグロールフィンデルのスーツの内ポケットに手を突っ込んだ。 「!! 社…長! 何を?」 「うるさい。黙って運転しろ」  そして盗むグロールフィンデルのスマホ。  もちろんロックはかかっている。ハンドルを握るグロールフィンデルの手をぐいと自分の方に引っ張り指で指紋認証解除。 「ちょ…やめてください」 「事故を起こすぞ」  怒ってる…いや、エルロンドが怒っているだろうことはわかっていたが。  部下のスマホを勝手にいじり倒す。 「あった」  今日やり取りしたであろうレゴラスとのメール履歴。  そして、添付写真。 「だめです、やめてください」 「運転に集中しろ」 「エルロンド!」  かなり焦るグロールフィンデルを無視して、写真を開いていく。  普通なスランドィルの写真から、会議中居眠りしたと横でレゴラスがピースしながら撮った奴とか、  浴槽に半分沈んで眠りこけてる写真とか、  酔っぱらってシャツの胸をはだけさせているのとか。  出てくる出てくる… 「………ほう」  一枚の写真に、エルロンドが唇を吊り上げる。 「あああああ〜〜〜〜」  グロールフィンデルが、がらにもなく素っ頓狂な声を出す。 「この写真、もらおう」 「レゴラスに知られたら、殺されますよ」 「こんな淫猥な写真を撮るのが悪い」  普段温厚なエルロンドが、悪い顔になってる。  へえ、ほう、こんな顔をするのか、面白い。  エルロンドは、勝手にグロールフィンデルのスマホから自分宛に写真を送った。  寝顔は寝顔なのだが、どんな夢を見ているのか、少し苦しげに眉をよせ、わずかに開いた唇から舌先が覗く。  まあたぶん酔っているのだろう、唇が熱を持って紅い。 「スランドゥイル、いい顔をする」  やばいやばいエルロンドのダークな部分が… 「社長、どうか正気を保ってください」  ふん、と鼻で笑うエルロンドに、グロールフィンデルは冷や汗をかいた。