エルロンド邸リビング 双子とレゴラスはジャパニーズホラー鑑賞中。 楽しそうにわーきゃー悲鳴を上げ、その合間にジャンクフードをぼりぼり食べ、週末を満喫。 そこに帰宅のエルロンドとその秘書。 リビングに入るなり、消された電気と散乱するお菓子の袋と、きゃいきゃい抱き合う息子二人と嫁に、 エルロンドは微笑み、グロールフィンデルは肩を落とす。 「またジャパニーズホラーですか。あなたたちも好きですね、くだらないものが」  呆れ声で部屋の電気を点け、ゴミを拾い始める。 「だって、面白いじゃないですか」  レゴラスも双子もニコニコ。 「どこがおもしろいのですか? その暗がりから出てくるだけでしょう?」 「そうそう、ちっとも怖くないところが面白い! 振り向いた瞬間、窓の外に顔があったら、瞬殺してるよな」 「振り向きざまにshootだよな」  双子に絡みながら、レゴラスも頷いている。  ホラー映画はシューティングゲームか? 「だったら、メイドインUSAの方がシューティングだと思うが?」 「だめだめ、あれはほんとにシューティングゲームだから。あからさますぎて」 「そうそう、ジャパニーズの音もなく近づいてくる感じがいいんだよ」  どうもホラー映画の楽しみ方が違う気もするが。  まあいい。楽しみ方は人それぞれだ。  部屋をおおかた片づけて、「それでは」と、グロールフィンデルは帰って行った。 「親父、食事は?」 「食べてきた」 「コーヒーでも飲む?」 「もらおう」  エルラダンがキッチンにコーヒーを煎れに行く。エルロヒアはエルロンドのコートやら何やら片づける。  レゴラスは、エルロンドのお気に入りのソファのクッションをぽんぽんと整えた。  リビング中央の一人掛けソファに腰を下ろすと、息子が薫り高いコーヒーを持ってくる。 「お疲れ様でした」  にっこりと笑うレゴラスが、エルロンドの頬にキスをする。  ああ、何たる至福。 「映画、続き観ていい?」  息子と嫁に聞かれ、エルロンドは頷く。  ホラー映画鑑賞再開。  そして、静かにコーヒーを飲むエルロンドの周りで、わーわーきゃーきゃーがまた始まる。 「ホラー映画?」  スランドゥイルは、リビングのソファでワインのグラスを傾けながら、少し眉を寄せる。 「くだらん」 「レゴラスは好きなようだが」 「あんなもの、本当の戦場を知らないやつしか楽しめん。現実はもっとスプラッタだし、本当に愛しているものが死んだなら」  一瞬、間を置く。 「たとえ、幽霊だろうと悪霊だろうと、会いたいと思うものだ。残念ながら、死んだ奴は幽霊にも悪霊にもなってはくれないがな」  グロールフィンデルは肩をすくめる。 「すまない。くだらないことを言った。映画は映画だ」 「ああ」  スランドゥイルの隣に腰を下ろす。 「まあ、ああいうのもいいかもしれんな」 「?」 「偽物だとわかっているからな」  グラスを傾けてから、ちらりとグロールフィンデルを見て、ふっと笑う。 「お前はどんな映画が好きだ?」 「映画に好き嫌いはない。趣味で映画を観賞したりはしない。ただ、話題のものはひととおり目を通している」 「勉強家だなあ」  スランドゥイルは笑い、グロールフィンデルはこの何気ない時間を愛しいと思った。