「はあ」 パソコンのモニターを見ながら、スランドゥイル、大きなため息。 「なに?」 隣でipadで遊んでたレゴラスが、父のPCを覗き込む。 「欲しい」 そこに映し出されているのは、 「………世界最大のイエローダイヤ?」 親指大もあるドロップ型のイエローダイヤ。 「欲しい」 「………」 その記事をざっと読んだレゴラスは、眉を寄せる。 「だめだからね」 「ええ〜〜〜」 「ええ〜〜じゃないの! いくらすると思ってんの?」 「9億5千万(円)」 「ウチ、破産しちゃうからね」 翌日。 スランドゥイルはホテルの最上階にあるバーカウンターに座り、 眼下の景色を眺めながらワインの飲んでいた。 隣りにいるのは、言わずと知れたグロールフィンデル。 「気に入らなかったか?」 心ここにあらずといったスランドゥイルに、グロールフィンデルは肩を落とす。 眺めのよいバーラウンジをチョイスしたのだが。 グロールフィンデルは、こんな都会的な風景が好きだったが、スランドゥイルはそうでもないらしい。 「場所を変えようか」 「ん?あ? いや別に」 我に返って振り向き、グロールフィンデルの瞳を見つめる。 「考え事か?」 「ああ、まあ」 「何か力になれることがあれば」 グロールフィンデルの顔をじっと見ていたスランドゥイルは、はあ、とため息をついた。 「いやな、先日、オークションでダイヤが落札されてな。 わしは最初からオークションには参加しなかったが。それで落札されたダイヤが、またすばらしいもので」 「欲しいのか」 「欲しい」 ルビー色のワインを、こくりと飲む。そしてため息。 グロールフィンデルは自分のモバイルを取り出すと、手早く最近の宝石のオークション情報を検索する。 「欲しいなら、手に入れてやろう」 スランドゥイルは、グロールフィンデルのモバイルに手のひらを乗せる。 「いや、いい」 「お前のためなら」 「9億もするダイヤだ」 一瞬黙るが、すぐに 「何とかしよう」 スランドゥイルの手を握る。 「本当に、いいんだ。憧れるだけの宝石もある。それより今夜は、手に入る宝石と戯れよう」 ふと笑って、スランドゥイルはグロールフィンデルの手に口づけた。 「わしのイエローダイヤと」 「イエローダイヤが欲しいって?」 ひくり、とスランドゥイルの顔が引きつる。 「どこから聞いた?」 「風の噂」 また盗聴でもしやがったか? 「買ってやろうか」 「やめろ、気色悪い」 「なに、一週間ばかり拘束して色んなプレイを試させてくれたら」 スランドゥイルは、がっくりと肩を落とす。 「んなもん、承知するか」 「残念だなあ」 グワイヒアはニヤリと笑った。 「石っころに9億も10億も出すなんざぁ俺には理解できないがな」 「それだけ美しい石なんだ」 「光物に興味はない。カラスじゃあるまいし」 そうだろうよ。天空の大鷲は地上の石には興味などあるまい。 「でも、お前の機嫌を取ろうと思ってな、俺なりのイエローダイヤを仕入れておいた」 はあ? と顔をあげる。 グワイヒアは、バーカウンターの冷蔵庫から、黄金色の液体の入った瓶を取り出した。 「ミード。上物だぞ。ビヨルンのお墨付き」 スランドゥイルの目が、きらんと輝く。 「さて、何をしてくれる?」 数日後 「父さん、イエローダイヤは諦めた?」 すっかりイエローダイヤの話をしなくなったスランドゥイル。 「まあな」 石ではないダイヤを堪能して、ご満悦のスランドゥイル。 「僕もね、父さんにプレゼントがあるんだけど」 「珍しいな」 「ちょっと、下の店に来て」 社長室からスランドゥイルを引っ張り出す。 一階店舗に入ったスランドゥイルは、ほう、と感嘆のため息をついた。 それは、けっこうすごい風景だった。今朝は普通のいつもどおりの店舗だったのに。 そういえば、なにやらばたばた音がしてたな。 「ど?」 にっこりレゴラス。 一階店舗が、黄色い花で埋め尽くされている。下品な感じではない。 レゴラスのプロデュースがいいのだろう。 まるで花畑。展示してある宝飾品は、花畑に集う妖精か、太陽の雫か、雨粒か。 「僕はイエローダイヤよりイエローフラワーの方がいいな」 たしかに、花に囲まれて微笑むレゴラスは、100億のダイヤより美しく愛らしい。 スランドゥイルは、息子をぎゅっと抱きしめた。