「ジョルジュ! 聞いてくださいよ〜!」

 息子の部屋に駆込むヘルガ父さん。正確にはザナドゥの部屋なのだけど。

 腹筋するザナドゥの足を押えるという名目で、上に乗っかっていたジョルジュは、

(ちっ邪魔が入ったか)

 という顔をする。

「スコルピオンがね〜! 私の作った夕飯は食べられないと言うんですよ!」

「お父さん。夕飯を作るのはけっこうですが、
スコルピオンおじさん一人に食べさせようとするのはやめてください。
家には食べ盛りが二人もいるのですから」

「あ、ちゃんと二人の分も作ってありますよ。
でも、まっ先にスコルピオンに食べて欲しかったから」

 乙女チックな目をするのはやめなさい。語尾にハートを付けるのも。

「はいはい。ザナドゥ、ごはんですって」

 しぶしぶ降り、今日も何かしでかしたであろう父親の後をついて行く。

 階下のダイニングでは、山盛のソーセージを前にスコルピオンが脱力していた。
それを無視し、テーブルについてソーセージをもりもり食べ出す。

「美味しいじゃないですか」

「ああ、美味しい」

 ザナドゥも頷く。

「おじさん、なぜ食べないんですか?」

 どんよりした顔のスコルピオンが、はああっと溜息をつく。

「いや、ヘルガがキッチンで鼻歌を歌いながら調理しているのを目撃してしまったから」

「鼻歌?」

 

♪腸詰〜腸詰〜腸に詰めるから腸詰〜

 いつか作りたい〜人間の腸詰〜♪

 

 とたんにフォークを置くザナドゥの隣で、ジョルジュは肩をすくめる。

「お父さん、人間を食べるというのは、宗教的にどうかと思いますよ」

「ええ?! だって、私、毎晩スコルピオンに食べられているんですよ? 
不公平じゃないですか!」

「そーゆー大人の事情は知りません!! とにかく! 人間の腸詰はダメです!!」

 しゅんとなるヘルガパパ。

「・・・・ジョルジュがダメというのなら、人間の腸詰は諦めます」

 そして、食欲減退したザナドゥの手をがしっと握る。

「ザナドゥ!」

「あ、はい」

 思わず引きつるザナドゥ君。

「スコルピオンを殺すときは、早めに教えてくださいね! 調理法を考えておきますし。
それに、レバーは血の滴る温かいうちが美味しいと思うんです!」

 ゲフッゲフッ(思わず咽るザナドゥ君)

「ああ、いや・・・・・・はい・・・・」

 貧血気味に応えながら、(親父復讐計画)の無期限延期を考えるザナドゥ君でした。









 

 

 

「で、何ニヤニヤしてるんですか、おじさん? 食べられてもいいんですか?」

「フフフ。ヘルガになら食べられても本望だ。とりあえず今夜、たっぷりと食べてもらおうか」

 なんだかこの夫婦、意思疎通ができているのかいないのか、考えてしまうジョルジュ君でした。